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■■■本と読書のプロジェクト papyrus

本の周辺のプロダクトの開発・製造・販売、レクチャー、展示、イベント、本のある空間づくりなど
本に関わるさまざまな活動を行っていきます。


honnohon

hactが尊敬する大好きな詩人である、長田弘先生の詩をひとつご紹介します。

 

「世界は一冊の本」

 

本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。    

書かれた文字だけが本ではない。
日の光り、星の瞬き、鳥の声、
川の音だって、本なのだ。    

ブナの林の静けさも、
ハナミズキの白い花々も、
おおきな孤独なケヤキの木も、本だ。    

本でないものはない。
世界というのは開かれた本で、
その本は見えない言葉で書かれている。    

ウルムチ、メッシナ、トンブクトゥ、
地図のうえの一点でしかない
遥かな国々の遥かな街々も、本だ。

そこに住む人びとの本が、街だ。
自由な雑踏が、本だ。
夜の窓の明かりの一つ一つが、本だ。

シカゴの先物市場の数字も、本だ。
ネフド砂漠の砂あらしも、本だ。
マヤの雨の神の閉じた二つの眼も、本だ。

人生という本を、人は胸に抱いている。
一個の人間は一冊の本なのだ。
記憶をなくした老人の表情も、本だ。

草原、雲、そして風。
黙って死んでゆくガゼルもヌーも、本だ。
権威をもたない尊厳が、すべてだ。

200億光年のなかの小さな星。
どんなことでもない。生きるとは、
考えることができるということだ。

本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。

 

長田 弘